Straight Travel えほん

希望(ホープ)のいる町

『希望(ホープ)のいる町』 ジョーン・バウアー 作 中田香 訳 作品社



あたしはパパの名も知らず、ママも幼いあたしをおばさんに預けて出て行ってしまった。でもあたしは、自分の名前をホープに変えて、人生の荒波に立ちむかう。ウェイトレスをしながら高校に通う少女が、名コックのおばさんと一緒に小さな町の町長選で正義感に燃えて活躍する、ニューベリー賞オナー賞作品。

ブルックリンで共同経営者が金を持ち逃げしたことから、ウィスコンシン州マルハニーに引っ越してきたアディとホープ。ホープは実母が育児放棄し、アディ(叔母)に育てられた高校二年生。実母がつけた「チューリップ」というふざけた名前を自分で「ホープ」と改名しました。母から備わったのはウェイトレスの才能だけ。パパが誰かはわからず、いつかパパに迎えに来てほしいと夢見ています。

アディとホープが勤めることになったのは、「ウェルカム・ステアウェイズ」という食堂。店主は白血病をわずらっている男性G・T・ストゥープ。病気になり、自分の命を精一杯使いたいと思ったストゥープは現町長の腐敗を暴き、町を良くするために町長選に立候補します。

アメリカの町長選のあれこれ、ホープが自分の生まれの境遇を受け入れていく様、仕事に励む様子、G・T・ストゥープの決意、ブレイヴァマン(レストランの同僚)との恋、そしてアディの愛情とおいしい料理…。

読みどころいっぱい、素敵な言葉もいっぱいのおすすめYA小説です。
作者は『靴をうるシンデレラ』のジョーン・バウアー。仕事を頑張り、成長する女の子を書かせたらピカイチ。

スポンサーサイト

ゴリラは語る

『ゴリラは語る』 山極寿一(やまぎわ・じゅいち)著 講談社



自分の姿をじっくり見るには、鏡が必要です。同じように、人間がどういう生き物なのかを知りたいときに、よき鏡となってくれるのが、ぼくたちと祖先を同じくしているゴリラなのです。恋と友情の間で悩むのは、なぜ?家族の役割って、なに?戦争をするのは、なぜ?自然が必要なのは、なぜ?そんな難しい問いに、ゴリラはヒントをくれます。ゴリラたちの姿を通して、世界の見え方が変わる体験をしてみませんか?ゴリラの家にホームステイしてだいじなことを教わりました。

ゴリラの研究には、ジャングルを渡り歩くゴリラを追いかけることが不可欠。著者の山極さんはザイール(現コンゴ)でゴリラの群れにホームステイ!
ゴリラ流あいさつとゴリラ語を学び、ゴリラ社会のルールを身につけていきます。

「ニホンザルが目線を合わせることは威嚇」なのに、ゴリラは挨拶するときに見つめ合うこと。
ゴリラが歌うこと。
1歳までは母子で過ごすが、1歳を過ぎると父子で過ごし、だんだん親離れしていくこと。
大人ゴリラのケンカに年少者の仲裁が入ることもあること…。

初めて知るゴリラの生態が盛りだくさん。
山極さんが「ゴリラを見ていると、人間ってめんどうな動物だなあと客観的に見えてきます」という指摘にも納得。

さまざまな著者による「15歳の寺子屋」シリーズ、本書はゴリラ研究の、日本におけるトップランナー・山極寿一さんの手によるもの。講談社の『動く図鑑MOVE 動物』の監修もしていらっしゃいます。

クララ

『クララ』 エミリー・アーノルド・マッカリー 作 よしいかずみ 訳 BL出版



300年近くも前、サイがまぼろしの動物だと思われていた時代にヨーロッパ中を旅したサイがいました。名前はクララ。絵のモデルになったり、歌がつくられたり、“サイ風”ヘアスタイルに、“サイ風”ドレスも大はやり。クララは、みんなの人気者です。

オランダ人の船長ヴァン・デル・メールはインドに行った際に、サイを初めて見ます。ヨーロッパでは「幻の動物」と呼ばれているサイ。是非ヨーロッパの人々にもサイを見せたいと、船長はサイのクララを譲り受け、船でヨーロッパに帰ります。

クララお目見えの始まりはベルリンのフリードリヒ大王。その後もクララは女帝マリア・テレジアに謁見したり、パリでルイ15世に会ったり…。ヴァン・デル・メール船長がクララの食費調達に苦労する話、ライン川をいかだで下る話など、絵がのびのびと美しく、見ていて楽しいです。こんな「サイ・フィーバー」が昔、ヨーロッパにあったなんて、初めて知りました。

300年前、ヨーロッパ中を旅したサイのクララの実話を元にした絵本。見開きに旅の地図も描かれています。クララについてもっと詳しく知りたい方は、大人向けの書籍のこちらをどうぞ。

はじめての北欧神話

『はじめての北欧神話』 菱木晃子 文 ナカムラジン 絵 徳間書店



氷の巨人をたおし、ばらばらにして、世界を作った神々。知恵にすぐれたオージン、力のつよい雷神トール、不老不死のりんごをまもる女神イズン、うらぎり者のロキ、そして、つねに神々に戦いをいどむ巨人族と、魔法の品を生み出す小人族。欧米のさまざまなファンタジーの原点となった北欧の神話を、小学校低学年から読める形で贈る絵読み物。

『ニルスの不思議な旅』の新訳などでも知られる、スウェーデン語翻訳家の菱木晃子さんが文章を書いた、小学生向けの北欧神話
の本です。漫画『進撃の巨人』は北欧神話をモチーフにしているそうなのですが、「はじめに現れた巨人・ユミル」や巨人から国を守るために壁を作る話など、「おおっ」と思う神話が掲載されています。

血なまぐさい話、神さまが褒美を払いしぶる話、足を見て結婚相手を決定、下半身が腐った娘、首飾り欲しさに小人と浮気など、北欧の神々も、古事記やギリシャの神々に劣らぬぶっとんだ面白い話がいろいろ。
娘たちは「コラーゲンよりイズンのリンゴ!ってCMすればいい」との感想。イズンという女神が育てるリンゴにはアンチエイジングの力があるそうです。

徳間書店の「はじめての神話」シリーズ。 ほかに古事記やギリシャ神話も刊行しています。

ゆでたまごひめ

『ゆでたまごひめ』 苅田澄子 文 山村浩二 絵 教育画劇



おべんとうのおかず達が大活躍!お弁当箱のお城に住む“ゆでたまごひめ”。 ソーセー爺を振り切り、外に飛び出した。 「わーい。ころころ」。しかし、サンドイッチ兄弟にさらわれてしまいます。おでんば“ゆでたまごひめ”の運命は?食べ物キャラクターが大活躍の絵本。

お弁当箱のお城に住む、ゆでたまごひめが主人公。女中のプチトマトや、門番のブロッコリーなど、お弁当によく入っているおかずたちが登場する絵本です。 お城の塔が水筒だったり、箸箱だったりする遊び心が楽しい。
外に遊びに出たゆでたまごひめは、サンドイッチ兄弟にさらわれてしまいます。さらわれた先は洋風バスケットのお城。

「ふふふ・・・、さあ、マヨネーズとまぜようぜ。」

このサンドイッチ兄弟のヤクザなキャラクターがいい味出してる!

最後はおにぎりたろうが助けに来て、みんな仲良くなって大団円です。幼稚園の子など、お弁当箱の中身でこんな見立て遊びをしそう。

続編で『ゆでたまごひめとみーとどろぼーる』があります。

愉快なたべものの絵本ではこちらもおすすめ。アニメ映画化もされています。

アート少女

『アート少女』 花形みつる 作 ポプラ社



優秀な三年生が引退して、オタクにヒキコモリ、変なメンバーばかりが残った美術部。弱小部活と校長に目をつけられて、存続の危機に。部室も部費も日にちもないのに県展に入選する作品をつくるには、いったいどうすれば?すぐブチキレる部長の根岸節子を筆頭に、個性豊かな仲間たちがタイムリミットぎりぎりまで色を塗り続ける。あきらめないヤツが強いんだ。アート愛と薀蓄あふれる、爆笑で感動の青春ストーリー。

公立中学校美術部の存続をかけたストーリー。アンソロジー『Fragile-こわれもの』に収録されていた短編『アート少女』の続編です。美術部の面々は個性豊か。部長は中学二年生の根岸節子。副部長で商才あふれる狩野芳子(ほうこ)、オタク男子の梅原、登校拒否児だけれど絵心豊かな青木くん、個性爆発ファッションの草間さつき。

部費を稼ぐために、人気男子生徒のデッサンを売ることを思いついた狩野方子。商売は大繁盛でしたが、校長にバレ、もともと目をつけられていた美術部は廃部になりかけます。「県展で大賞をとる」ことを条件に、校長と部の存続をかけて賭けをする美術部。まずは資金稼ぎのために、商店街のシャッターに絵をかくバイトを始めようとするのですが…。

登場人物の名前に、美術への愛があふれたYA小説。物語の中に登場する美術作品やアーティストも、有名どころが多くてマニアックすぎず、中学生が読むのにちょうどいい塩梅だと思います。文章やストーリー展開が重くないので、マンガを読むように読める作品。美術部の子に。

脱皮コレクション

『脱皮コレクション』 岡島秀治 監修 新開孝/関慎太郎 写真 日本文芸社



自分が脱いだ皮をパクパク食べるニホンアマガエル、きらきらと透き通る精巧なガラス細工のようなベッコウガガンボ、蛹からひょっこりとのぞく愛くるしい眼のキイロショウジョウバエ、脱いだ瞬間に食べられてしまうアメリカザリガニ。初の「脱皮」写真集。

私が「脱皮するいきもの」といって思い浮かぶのは、ヘビ、ザリガニ、セミ・・・あとはチョウがサナギから出てくるのも脱皮かな、というくらい。でも実は蜘蛛やカエル、やぶ蚊など、さまざまな生き物が脱皮していることをこの写真集で初めて知り、私も昨日までの自分からダッピ!

ヘビが脱皮する様子も必見。
布団から出るように、動きながら、皮から体を出すのかな?と想像していたら、靴下を裏返して脱ぐように脱皮するそうです。

amazonに掲載されている、出版社からの『今の自分に焦りや不安を感じている方、「自分を変えたい!」と考えている方にもおすすめ。さまざまな生きものたちの懸命な脱皮を眺めるうちに、自分も何だか脱皮したくなってくる…。そんな刺激的な一冊になっています。 』という商品説明は、「そんなことナイナイ。」と思わず笑ってしまいましたが、連続写真でさまざまな生き物の「脱皮」が見られる、知的好奇心が満たされる写真集です。理科好きさんへ。

ちいさな島

『ちいさな島』 ゴールデン・マクドナルド 作 レナード・ワイスガード 絵 谷川俊太郎 訳 童話館出版



1947年度コールデコット賞受賞。マーガレット・ワイズ・ブラウン(ゴールデン・マクドナルドはペンネーム)が、ちいさな島を舞台に語る、人と世界と自然のハーモニー。

昨日に続き、マーガレット・ワイズ・ブラウンつづき。
ちいさな島の春夏秋冬を描いた、静かな絵本です。

「なんてちっぽけなところだ」 こねこはいった。
「海が とてつもなくおおきいように この島は とてつもなくちいさい」

「きみだって そうだよ」 島がいった。

「ぼくも ちいさな島かもね」 こねこはいった。
「そらとぶ ちいさな毛がわの島だ」
こねこは じめんをけって くうちゅうに とびあがった。


風景画のような詩のような絵本なので、パパッと読んでしまうと魅力激減。できるだけゆっくりとしたペースで、波にただようように言葉の響きに耳を澄ませ、絵を眺めたい絵本です。

ちいさな島でいることは すばらしい。
世界につながりながら
自分の世界をもち
かがやくあおい海に かこまれて。

ことりのおそうしき

『ことりのおそうしき』 マーガレット・ワイズ・ブラウン 文 クリスチャン・ロビンソン 絵 なかがわちひろ 訳 あすなろ書房



日常に突然おとずれた「死」とその受けとめ方を、マーガレット・ワイズ・ブラウンがやさしくおごそかに描いた絵本。
以前『ちいさなとりよ』(レミー・シャーリップ 絵 与田凖一 訳)というタイトルで、岩波書店より出版されていた本の新訳版。絵は、Last Stop on Market Street でニューベリー賞とコルデコット賞オナーをダブル受賞したばかりの、今をときめく画家クリスチャン・ロビンソンです。


 ことりがしんでいました。

いきなり冒頭からこんな一文ではじまり、ドキッとする絵本。
子どもたちは小さな小鳥の亡骸を見つけ、大人たちがするように、自分たちで小鳥のお葬式をしようと思い立ちます。

 こどもたちは ことりをみつけて よかったと おもいました。

穴を掘って柔らかなシダの葉をしきつめ、ブドウの葉でくるんだ小鳥を寝かせ、白いスミレと黄色い花で飾り、大人たちがするように歌を歌ってあげます。

 こどもたちは なきました。
 あんまり きれいで かなしい うただから。
 もりは みどりのにおいで いっぱいで、
 そして ことりが しんでいたから。


子どもたちが初めて出会う死。最後の余韻のある終わり方もいいです。
悲しみと、優しい悼みにあふれた、ことりのおそうしき。
 

海辺のくま

『海辺のくま』 クレイ・カーミッシェル 作 江國香織 訳 BL出版 



海辺に住むくまは、仲良しのクララといつも一緒でした。でも夜になると父さんが恋しいくまは、ある日父さんを探しに出かけます。探しながらいろいろな生き物と交わす会話にも結末にも、真実の持つ力と優しさがいっぱいです。

父親が欲しいくまは、父親を探しに行きます。
くまは、道中で会う生き物たちに、「あなたのとうさんってどんなかんじ?」と聞かれ、
「秘密をうちあけられるような感じ」
「いろいろ教えてくれる人」
「ぼくがぼくでいるだけで愛してくれる人」などと答えますが、
「そんな人には会ったことがないな。」とみんなに返されます。

父親に手紙を書いてみたり、父親を(砂で)つくってみたり、父親の姿を夜空にみつけてみたり・・・
父親が欲しくてたまらないクマですが、行き会ったヤドカリの言葉で、自分の帰るべき「家」がわかります。

自分がもっていなくて、欲しくてたまらないものを強く求めて、
けれどもやっぱり手に入らずに失望し、
そのことを受け入れ、自分が今、手にしているものの価値を理解する。

小さな版型の子どもが好きそうな、かわいらしい絵柄の絵本です。でもティーン~大人に是非手にとってほしい内容。江國香織さんの翻訳の文章も美しいです。この絵本の創作秘話があとがきにあるのですが、それを読むとまた一層クマの姿をせつなく感じます。