Straight Travel えほん

盾(シールド)

『盾(シールド)』 村上龍 作 はまのゆか 絵 幻冬社



仲良しだったコジマとキジマ、愛犬と共に野原を駆けめぐった少年の日々。やがて二人は別の道を歩むようになるが、決して忘れない言葉があった。幼いころ、森に住む老人に聞いた「盾、シールドが必要だ」という謎の言葉が意味するものとは。自分で自分を守るしかないのか、それとも?不安と希望をあわせ持つすべての人に贈る、心温まる物語。

ある村に住んでいたふたりの少年、コジマとキジマ。
コジマは人当たりのいい優等生。
キジマは気難しく反抗的な男の子。

そんなふたりは「本当に頭がいいとはどういうことか」を知りたくて、山に住む名なしの老人のところへ出かけます。
老人は「だれかの都合で、頭がいいとか、悪いとか、決められる。そんなことには意味がない。」と語り、二人はすっかり混乱してしまいます。そして老人は続けて話します。

「人間は、からだの中心にあるやわらかいものを、どうにかして守っていかなければならない。守るためには盾、シールドが必要だ。」

ふたりはその後もずっと「シールドとは何か」について考え続けます。
成長につれて、ふたりを守るシールドも変わってきます。
人当たりよく、良い子だったコジマですが、高校生では優秀な子に囲まれ、すっかり自信を失い消極的になります。
ボクシングを始めたキジマは、周囲の人間に支配されていると感じることが少なくなり、反抗的なところがなくなります。

就職したキジマにとって、大企業に勤め、有力な上司に好かれることは大きなシールドでした。しかし人員整理にひっかかり、再就職も決まらず、自分の無力さを思い知ります。
引きこもりの後、犬の訓練士になったコジマは、語学力をシールドとし、大切な伴侶にも恵まれます。

自分の外側にあるシールド。自分を内側から支えてくれるシールド。

『13歳のハローワーク』で組んだおふたりによる、文章長めのYA向け絵読み物。
シールドって何だろう?自分にとってのシールドとは?と考えさせられる一冊です。

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NO.6(ナンバー・シックス)♯1

『NO.6(ナンバー・シックス)♯1』 あさのあつこ 作 講談社



2013年の未来都市“NO.6”。人類の理想を実現した街で、2歳の時から最高ランクのエリートとして育てられた紫苑は、12歳の誕生日の夜、「ネズミ」と名乗る少年に出会ってから運命が急転回。あの夜、ぼくが窓を開けなければ、飢えることも、嘆くことも、戦いも知らずに済んだはずだった。

科学の粋を集めた理想都市「NO.6」。ある台風の日、NO.6に住む12歳の少年・紫苑の部屋に、窓からケガをした少年が入ってきます。彼の名はネズミ。放っておけない紫苑は彼を手当てし、部屋で休ませ、逃がします。
しかしネズミは西ブロックの矯正施設から逃げ出した受刑者だったため、紫苑はかくまった罪を問われ、エリートコースに進む道を絶たれ、森林公園の清掃員として働くことになります。
紫苑が16歳の時、森林公園で変死体が発見され、治安局は紫苑を犯人としてまつりあげようとします。紫苑を助けるネズミ。治安局から追われる紫苑はIDを捨て、ネズミと共に西ブロックへ逃れます。

おぞましい変死体の死因とは?管理都市NO.6の歪みとは?
高い能力を持ち、NO.6の在り方に疑問をもっていた紫苑。そんな紫苑がタフな少年ネズミと行動をともにすることで、「生き延びる」たくましさを身につけていきます。
あさのあつこさんのYA向けディストピア小説。あからさまな性的なセリフもあるので、中学生以上向け。全9巻で完結しています。

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 4

『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(ぜにてんどう)4』 廣嶋玲子 作 jyajya 絵 偕成社



お菓子を買った人の運命を変える駄菓子屋「銭天堂」。第4弾は、不気味な少女よどみが「たたりめ堂」をオープン。悪意のこもった菓子で紅子の客を奪う。菓子勝負の軍配があがるのは、「銭天堂」か「たたりめ堂」か?全6話収録。

小学生に大人気の「銭天堂」シリーズ。『はんぴらり』シリーズの廣嶋玲子さんが書かれています。
小4の娘が学校図書室でやっと借りられた!とのことで、なぜか4巻から。(笑)でも各話読み切りなので、途中巻からでも大丈夫です。

ある特定の小銭をもっている人しかたどりつけない駄菓子屋・銭天堂。そこの店主は古銭柄の赤紫の着物をきた紅子という白髪のおばさん。彼女が売るのは、幸運になるか不運になるかを自分で選べるふしぎな駄菓子。
第四巻では不気味な少女よどみが営む「たたりめ堂」のお菓子が、紅子に対抗します。

願いをかなえる魔法の品かと思いきや、持ち主を不運に陥れることもあるという、『笑うせえるすまん』のような展開。身近なシチュエーションに「ふしぎ」と「こわい」が共存する感じ、人気シリーズなのもうなずけます。

公爵夫人のふわふわケーキ

『公爵夫人のふわふわケーキ』 ヴァージニア・カール 作 灰島かり 訳 平凡社



むかし、ある国に、13人のおひめさまとおとうさまとおかあさまがすんでいました。おとうさまは「公爵さま」、おかあさまは「公爵夫人」とよばれています。アメリカで50年以上も子どもたちに読みつがれてきた愛らしい絵本。おはなし絵本の楽しさを存分に味わえるヴァージニア・カールの代表作。

緑と赤のパキッとした色合いが目をひく絵本。
公爵夫人は公爵様と13人の姫様たちのために、ケーキを焼くことをおもいつきます。
ところがふくらし粉をいれすぎて、ケーキはふわふわふわふわ・・・、公爵夫人はケーキにのって、塔より高くのぼってしまいます。

単純なお話なのですが、なんともいえぬほのぼのとのびやかな味わいの絵本です。絵柄がいいのです。

同じくほのぼのとした、とぼけた絵本が好きな方には、こんな絵本もおすすめです。

空の飛びかた

『空の飛びかた』 ゼバスティアン・メッシェンモーザー 作 関口裕昭 訳 光村教育図書



ある日、散歩の途中、わたしは1羽のペンギンにひょっこり出くわした。空から落っこちたんだよ、とやつは言った。やつはどうみてもペンギンだった。ペンギンが飛べないことぐらい、わたしだって知っていた。

鉛筆のデッサン風の線+わずかな彩色で描かれた絵本。
・・・というとストイックな絵本かと思いきや、内容はとてもユーモラス。( ^ω^ )

「空から落っこちた」というペンギンを引き取った私は、ペンギンと一緒に暮らし、再び飛ぶための特訓を始めます。
ペンギンを思うわたしの生真面目ぶりとは対照的に、さほど真剣さが感じられないペンギン本人との対比が面白い。

果たしてペンギンは空を飛ぶのでしょうか?

同じく、展開が意外な空飛び絵本ではこちらもおすすめ。奇しくも『空の飛びかた』と同じく、ドイツの絵本です。



フラダン

『フラダン』 古内一絵(ふるうちかずえ)作 小峰書店



「ようこそ、フラ男子」
藍色の垂れ幕が、ホールの後方の壁にでかでかと貼ってあった。天井の高い会場は、お年寄りたちでいっぱいだ。車椅子に座った人や、腕に点滴の針を刺したままの人もいる。その全員が、きらきらした眼差しでこちらを見ていた。自ずと穣(ゆたか)の足に力がこもった。宙彦(おきひこ)と動きを合わせ、軽快なリズムに乗って、ステージの床を踏みしめる。


水泳部をやめたところを、強引な女子生徒・澤田詩織に誘われ、高校のフラ愛好会に入るはめになった辻本穣。そこには、同じクラスで気になる存在だった女子・林マヤの姿も。シンガポールからのイケメン転校生・宙彦、一年生の巨漢・夏目大河(なつめたいが)、モヤシのような薄葉健一(うすばけんいち)と男子生徒も揃い、フラ愛好会はフラガールズ甲子園を目指して頑張ります。

舞台は震災後の福島の工業高校。
ひとくちに福島県民といっても、近親者を亡くしているもの、大きな被害はなかった家、復興支援にきているもの、原発関係者の家族…など立場はさまざま。そんなことから高校にあがってからは、お互いの過去の重さの予測がつかず、気軽に相手の事情に踏み込めない生徒たち。本作ではそんな「5年後の福島」が描かれています。いつまでも「復興、復興」といわれ続けてなにも変わらない現実に腹が立てる老人、震災の痛みを抱えながらもおのずから伸びていく若い力、さまざまな生が同時に描かれていて読みごたえがあります。

男子がフラを踊るという意外性を楽しく読みつつ、震災復興について考えさせられる優れた作品。
どの登場人物の顔かが一目でわかる表紙絵もマル!

びゅびゅんごまがまわったら

『びゅんびゅんごまがまわったら』 宮川ひろ 作 林明子 絵 童心社



こうすけたちと、あまのじゃくな校長先生とのびゅんびゅんごま合戦の結果は。

かえで小学校には校庭から続く遊び場があります。そこでこうすけは霜で凍った一本橋を渡る時に滑って骨を折り、遊び場は鍵をかけられてしまいます。元気になったこうすけは、友達と一緒に、校長先生に鍵を開けてほしいと頼みます。すると校長先生は、「びゅんびゅんごまがまわったら、頼みを聞いてもいい」と言って、びゅんびゅんごまをくれます。回せるようになった子どもたちが校長室にいくと、先生のこまは2つ、3つと増えていくのでした。

校長先生が靴下を脱いでまで実演する4つ回しがすごい!
最後までこま回しに挑戦するこうすけ、別のことに遊びを見つけていく仲間たちと、子どもたちのたくましさもみどころです。

最後のこどもたちの仕返しもオチャメ。
自分もこういう度量のある大人でありたいなあと思います。

ほかに、「こんな先生がいたら」と思う絵本はこちら。

悩みによりそってくれる優しい先生。



こどもの叫びにがっぷり四つに組んでくれる先生。

じごくのラーメンや

『じごくのラーメンや』 苅田澄子 作 西村繁男 絵 教育画劇



じごくにラーメンやができたらしいよ。名物は、からーいからーい"ちのいけ"ラーメン。ぜんぶ食べたら天国へ行けるんだって! 店は毎日だいぎょうれつ。「うっはっはー、大繁盛じゃあ」とえんま様。ラーメン食べに、天国から神様たちもやってきた。弾けた設定にとぼけた絵が光る、すかっと笑えるてんやわんや爆笑絵本。

いつも文句ばかりで天国に行きたがる亡者たち。閻魔様は地獄にも何か名物を作ろうと、ラーメン屋を開店。しかし辛すぎて誰も食べられません。「これを完食したら天国に行ける」 こととすると、店は連日大繁盛。それを天国の池から見ていた仏さまたちも、ラーメンを食べにやってきます。

地獄と天国の、絵のタッチや色遣い、両者の言葉の違いが対照的で面白い。オチもこれまた愉快。
大勢でのよみきかせにも向いていますが、じっくり細かいところをよく見ると、小野篁が閻魔様の書記官を務めていたり、天国の仏さまの机に、食べ残しの食器があったり・・・と、とても楽しいです。苅田澄子さんの絵本にしばらくハマりそう。(*^_^*)

負けないパティシエガール

『負けないパティシエガール』 ジョーン・バウアー 作 灰島かり 訳 小学館



主人公フォスターは、毎日必ずケーキを焼くことにしている。なぜって、そうすれば、いつでもどこでもおいしいものが食べられるから。そう、フォスターは、カップケーキ作りの天才なのだ。ある日、ママと二人で家を出て、新しい人生を送ることになる。フォスターを待ち受けているのは。カップケーキのようにあまくはないサクセスストーリー。

お菓子づくりが大好きな12歳の少女フォスター。ママの元恋人で、プレスリーのモノマネ芸人のハックがママを殴り、ママはフォスターを守ろうと着の身着のまま、車でメンフィスの町を抜け出します。たどりついたのは小さな町カルペパー。そこで親切なキティとレスター夫妻にキャンピングカーを貸してもらい、母娘でそこに暮らすことになります。

フォスターは文字が読めないディスレクシアの障害を抱えており、学校の勉強は苦手ですが、お菓子づくりは大の得意。お手製のカップケーキを食堂に置いてもらえることになり、フォスターのカップケーキの美味しさは次第に評判になっていきます。

フォスターがカルペパーの町で友達になったのは、ドキュメント映画をとりたい少年メイコン。彼は大女優チャリーナの家で手伝いをしています。フォスターもチャリーナと知り合いになり、やがてチャリーナがフォスターに文字を、フォスターがチャリーナに料理を、お互いに教えあうことになります。

いつか自分のケーキのお店を開き、「パティシエガール」のテレビ番組を持ちたいと思っているフォスター。そんなフォスターの作るカップケーキがとにかくとってもおいしそう!
バタースコッチ味、キャラメル味、バニラ味、カスタードアップル、モルト&チョコ・・・う~ん、お腹がなりそう。本の裏表紙にはフォスターのバニラカップケーキのレシピ付。我が家でも作りましたが、とてもおいしかったですよ!
しかしそのような明るい面だけでなく、フォスターの最大の悩みは、6年生なのに文字が読めないという大きな困難を抱えていること。その障害に「負けそう」なところを、周囲の人々の励ましや、自身のふんばりで克服しようとフォスターが頑張る姿が、胸に響きます。世の中の暴力に負けるな!フォスター!

友達のメイコンや、家主のレスターさん、女優のチャリーナさん、そしてママ…、フォスターの周囲の人々はどの人も個性的かつ魅力的で、心に残る言葉がたくさんあります。おすすめのYA小説。★5つ。

フリッツと満月の夜

『フリッツと満月の夜』 松尾由美 作 ポプラ社



夏休みを港町で過ごすことになったカズヤ。月の光と不思議な猫に導かれ、彼が知ることになった「秘密」とは。小説家の父とデザイナーの母、食堂「メルシー軒」のおかしな息子ミツルとその両親、お金持ちで偏屈な老婦人、そして、猫…。個性的なキャラクターが満載の、ひと夏のさわやかミステリー。

夏休みに、父とふたりで港町で三週間過ごすことになった、小学校5年生のカズヤ。
カズヤは、近所の食堂「メルシー軒」の息子でミステリー好きのミツルと知り合いになり、この町で2年前に亡くなった老婦人の遺産の行方についての謎に挑むことになります。

表題のフリッツはネコの名前。フリッツが事件を解き明かすヒントを与えてくれる・・・というと、赤川次郎さんの三毛猫ホームズシリーズみたいですが、殺人事件は起きないので、子どもが読んでもちょうどいいドキドキ加減。
実はフリッツは話ができる・・・のですが、その「ネコが話せる」ファンタジーは、直接事件の解決には関係しないので、そのフィクション具合もちょうどいい。

ミステリーが好きな小学生~中学生向け。
YA向けのミステリーでは講談社のミステリーランドのシリーズもおすすめです。森博嗣さんや、小野不由美さん、乙一さん、恩田陸さんなど、そうそうたる方々が執筆なさっています。