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Straight Travel えほん

しずくの首飾り

『しずくの首飾り』 ジョーン・エイキン 作 ヤン・ピアンコフスキー 絵 猪熊葉子 訳 岩波書店



しずくの首飾りをかけていれば、ローラはどしゃぶりのなかでもぬれないし、広い海も泳いでわたることができました。「しずくの首飾り」、さばくの駅ではたらく駅員たちが旅に出る「三人の旅人」、空とぶアップル・パイ、たまごからかえった家など、自由な空想と、おどろきの魔法がつぎつぎとびだす8篇の童話集。

私が読んだのは単行本ですが、リンクがなかったので、昨年の6月に発売された岩波少年文庫のリンクを貼っておきます。文庫では東直子さんが解説を書かれているそうです。単行本では見開きに、8篇の童話集に出てくるモチーフを影絵仕立てにした絵が描かれており、とても美しいです。

私が特に好きなのはサバク駅で働く三人の駅員の話です。ぜんぜん汽車がとまならい田舎の駅。3人は長年信号を動かしたこともないし、切符を切ったこともありません。そこに貯金を貯めた3人のうちのひとりが、旅に出ると言い出します。そうすれば汽車はこの駅にとまるし、信号も動かせるし、切符も切れる。当日彼らはウキウキと仕事をし、やがて旅から帰ってきた駅員は残ったふたりにおみやげ話をしました。次にふたりめの駅員も同じように旅に出掛けます。そして3人目は・・・。

駅員の仕事をしたいから、自分で乗客になるという発想が、がまくんとかえるくんの『おてがみ』みたいで面白いなと思いました。3人目の旅先にも意外性があって良かったです。

どのお話もわくわくとした空想にあふれた短篇です。黙読するより、親が語り聞かせたり、ストーリーテリング等に向いている作品ではないかなあと感じました。

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数字はわたしのことば

『数字はわたしのことば』 シェリル・バードー 文 バーバラ・マクリントック 絵 ほるぷ出版



ソフィーは、数学が大すきな女の子。いつか、詩人がことばをつかうように、自分は数字をつかって宇宙のなぞをときあかしたい、と思っていました。ところがその時代、女の子が大学に行って数学を勉強するなんて、とんでもないことだったのです。実在した数学者をモデルに、人気絵本作家バーバラ・マクリントックが想像力ゆたかな絵をえがきました。

実話をもとにした伝記絵本です。

数学が大好きだった少女、ソフィー・ジェルマン。なんとフランス革命の時代の人。
女の子に教育はいらないという時代に、数学にとりつかれたソフィー。はじめはソフィーに勉強させまいとしていた親もやがてあきらめて、ソフィーの数学好きを受け入れるしかありませんでした。

19歳になったソフィーは男名前で大学に数学の課題を送りつづけます。すると大学のラグランジュ教授が自宅を訪れ、男名前の手紙の送り主の正体が若い女性と知り、驚きます。女性の天才数学者ソフィーの噂はパリ中に知れ渡り、ソフィーはあちこちの夕食会に呼ばれます。しかし、数学の話を真剣にできる相手はできませんでした。

ソフィーは勉強を続け、やがてソフィーが32歳のとき、彼女はガラスの上に置いた砂が振動で模様をつくる実験に出会います。パリ王立科学アカデミーでは、この砂の模様のでき方を数学の方程式であらわした人への懸賞金が発表されます。ソフィーはこの方程式を明らかにするために、たゆまぬ実験と計算を重ね、1816年、ソフィーは見事、王立科学アカデミーで大賞をとった初めての女性となりました。ソフィーの振動の研究は、建物の強度を考えるうえで、今でも大変役にたっているそうです。

巻末にはソフィーのその後についての記述もあります。画家はクラシックな味わいが持ち味のバーバラ・マクリントック。
カラーマーカーを使った数字が飛び出すページが華やかです。

月とアポロとマーガレット

『月とアポロとマーガレット』 ディーン・ロビンズ 文 ルーシー・ナイズリー 絵 鳥飼(とりかい)玖美子 訳 評論社



「アポロ計画」を成功させた女性プログラマー、マーガレット・ハミルトンの伝記絵本。

NASAでプログラマーとして月着陸をささえた女性、マーガレット・ハミルトンの伝記絵本です。

マーガレット・ハミルトンは子どもの時からいろいろなことに疑問をもつ少女でした。虫や野球や空の星。成長してからは複雑な数学や宇宙に興味を持ち、のちにコンピューター技師としてNASAで働くことになります。

そのころのコンピューターはまだ初期の段階。マーガレットは宇宙船が月までの行き来に起こりそうなあらゆる問題を考え、それがコンピュータで解決できるようにコードを書きました。まもなくマーガレットはNASAアポロ計画のリーダーになり、アポロ11号で初めて月着陸を試みることになります。ところが着陸間際になって、コンピュータが過重負荷になって警告音がなりだします。しかしマーガレットがいれておいたコードのおかげで、コンピュータは着陸だけに集中。そして無事に月に着陸できたのです。

作者のディーン・ロビンズはジャーナリストで、ご本人へのインタビューをもとにこの絵本ができたそうです。画家のルーシー・ナイズリーはグラフィック・ノベルのイラストレーター。調べたところ、グラフィック・ノベルとは、アメリカの、子供向けではない芸術的なコミックを指す言葉だそうです。そして訳者は、人類が初めて月に着陸した日に衛星中継で同時通訳した鳥飼玖美子さん。こんな三人がタッグを組んでいる絵本なんて豪華。裏見開きにマーガレット・ハミルトンの写真が4枚も載っているもいいですね!

あまがえるのかくれんぼ

『あまがえるのかくれんぼ』 たてのひろし 作 かわしまはるこ 絵 世界文化社



あまがえるのラッタ、チモ、アルノーの3匹は、かくれんぼが大好き。いつものように遊んでいると、ラッタの体がへんな色になっていました。一体どうしてしまったのでしょうか。小学館児童出版文化賞受賞作家の舘野鴻と、生物画家 かわしまはるこが初めて描く “会話するカエル"。愛しき小さな者たちの成長物語。

表紙の、細密に描かれた美しい絵にうっとりして手に取りました。

文章は絵本作家で生物画家、絵本『つちはんみょう』などでしられる、たてのひろしさん。
画家は2006年よりたてのさんに師事している生物画家のかわしまはるこさんです。

あとがきによると、かわしまさんは何年もアマガエルを飼育しているらしく、生物画とおはなし画のちょうどいいバランスのところで描いているように感じました。たてのさんが「ビアトリクス・ポターを思い出させる」と書いていますが、私も共感!カエルたちが水で体を洗っているシーンなんて最高。

あまがえるが場所によって体の色を変える様子が、お勉強的でなく「かくれんぼ」というお話で楽しく知ることができる科学絵本です。

まちぼうけの生態学

『まちぼうけの生態学』 遠藤知二(ともじ)文 岡本よしろう 絵 福音館書店



北海道の草むらで、アカオニグモというクモの見事な狩りに出会った著者は、狩りの名人アカオニグモの観察を始めます。アカオニグモは網の近くに作った隠れ場所で身を潜めながら、じっと網に虫がかかるのをまちます。観察回数は10分×380回、63時間20分。クモの網のまわりを飛んだ虫は4678匹でした。クモはどれくらいの時間まてば虫一匹をつかまえることができたでしょう?草むらで、虫たちの命の攻防をみつめます。

月刊『たくさんのふしぎ』2011年8月号の書籍化です。

著者は北海道の草むらに陣取り、クモを見張ります。クモの巣にはどれくらいの虫がかかるのか?そしてどれくらいの虫は網から逃げてしまうのか?著者は虫の数を数え、クモの「狩りの確率」をさぐります。

著者がクモの巣のまわり(1M四方)でカウントした虫は、ハエ、1424匹、カ、847匹、ハチ、707匹、ほか多数の虫・・・本当に頭が下がります。クモといえば、マンガや映画でも容赦ないハンターというイメージで描かれると思いますが、実際のクモの狩りはただひたすら網をかけて待つ地道なもの。虫が網を見つけてよけることも多いし、網にかかっても逃げることも多いし、意外とクモの狩りの確率は低いです。

クモは飢えにとても強く、何も食べなくても水さえあれば何十日も生きられるらしいです。
これを読んで、なんだかクモが不憫に思えてきました・・・。これからいたずらにクモの巣を破るのはやめます。

続編で、キスジベッコウ(蜂)は捕獲するオニグモに好みがあるのか?を北海道で調査した『おいかけっこの生態学』(『たくさんのふしぎ』2015年7月号)と、
キオビベッコウ(蜂)が砂地でほかの生き物たちとどのように共存しているのかを京都で調査した『すれちがいの生態学』(たくさんのふしぎ2017年7月号)があります。本作と併せてどうぞ。

ドーナツのあなのはなし

『ドーナツのあなのはなし』 パット・ミラー 文 ヴィンセント・X・キルシュ 絵 金原瑞人訳 廣済堂あかつき



ドーナツのあなは どうして できたのか 知ってる?
それは1847年に、16歳のハンソン・グレゴリーが、船で朝食を作っているときに発明したんだ。最初の名前は「あなあきケーキ」。それが世界中に広まって、みんなの大すきなドーナツになったんだ。
船乗りたちのゆかいな話とドーナツのあなの発見物語。楽しいイラストいっぱいのユニークなノンフィクション絵本。


見開きいっぱいの、カラフルなドーナツがかわいい。
左ページのマルで囲われた中に文章が書かれ、右側のマルで囲われた中に絵が描かれる形で、絵本は進みます。

少年ハンソンが、パン生地の中まで火が通るように、生地に穴をあけた、という話がメイン。
笑い話のような「諸説」もふたつ紹介されています。

最後にハンソンご本人がドーナツを持った写真つき。こういう実話感がいいよね。
裏表紙の、8つのドーナツをそれぞれの手にもったクラーケンの絵もイイです。

ひとりぼっちの不時着

『ひとりぼっちの不時着』 ゲイリー・ポールセン 作 西村醇子 訳 安藤由紀 絵 くもん出版



ここはどこなんだろう。おなかがすいて死にそうなのに、食べ物はなにもない。マッチがないから、火もおこせない。森にはオオカミやクマだっているだろう。両親の離婚後のはじめての夏、小型飛行機で父親のもとへ向かうとちゅう、思いがけない事故で、少年はひとりカナダの森林に不時着した。たったひとつ残された道具、手おのと、自分自身をたよりに、大自然のなかで“生きる”ことを学び、たくましく成長していく少年の冒険をえがく。ニューベリー賞銀賞受賞。

表紙でブライアンがもっている赤いものは何だろう・・・丸めたウィンドブレーカー??

主人公のブライアンは13歳。カナダに住む父親の家に向かう途中、小型飛行機のパイロットが心臓麻痺で死亡、そのまま航路もわからず一時間ほど飛んだあとに、カナダの森林地帯の湖に飛行機が不時着します。場所もわからず、救援の見込みもない森の中、都会育ちの少年・ブライアンはひとりきり。持ち物は母からもらった手斧だけ。

初日は木の下で眠り、湖の水を飲んで過ごしたブライアンですが、二日目からは生きのびるために、雨をしのげる場所をさがし、食物を探しはじめます。日を重ねるにつれて、ブライアンは火を起こそうと試み、動物(魚や鳥)をとって食べようと、工夫して武器をつくったりと、ひとりきりで、たくましく生き抜いていきます。

この装備が何もなく、アウトドアの知識もないブライアンが、サバイバル生活をしていく様子がとても興味深く、スリリングです。ブライアンの森での生活はなんと54日間!彼はどうやって生き延びたのでしょうか、またどのように助けがきたのでしょうか。

本書には続編もあるとのこと。未邦訳なのが残念。原作の初版は1987年(邦訳出版は1994年)と古い児童書ですが、とても面白かったです!サバイバルものが好きな男の子に、おすすめの児童書です。高学年くらいから。

おばけやさん 3 ふわふわするのもしごとです

『おばけやさん 3 ふわふわするのもしごとです』 おかべりか 作 偕成社



いらっしゃいませ、こちらはおばけやでございます。といいましても、おばけをうっているわけではありません。当店のおばけが、おるすばんや、おつかい、あかちゃんのおもり…といったちょっとしたおてつだいから、人間にはできないような大きなしごとまで、なんでもおひきうけいたします。

おばけやさんシリーズの三作目。本作では「おばけやさん」のおばけが、大きなお屋敷にすむ謎の画家から「モデル」のしごとを頼まれます。初のモデル役はうまくいくでしょうか。

おかべりかさんの本は初めて読みましたが、富安陽子さんの『ムジナ探偵局』や、『やまんば妖怪学校』の挿絵を描いていらっしゃる方だそうです。本シリーズは幼年向け絵読み物。幼稚園年長~小学校低学年くらい向け。ゾロリシリーズのように、マンガとお話が融合していてまとまった文章を読み慣れていない年齢の子に読みやすい工夫がされています。

ゾロリやおしりたんていはおならネタなどのギャグものですが、こちらはふわふわ可愛いオバケでなごみ系。女の子や、どぎつい表現が好きでない男の子に向いているかなと思います。私はゾロリの方が好きですが。

現在シリーズで第七巻まで出版されています。

2019年 面白かった本

もうすぐ今年も終わりですね。
少し早いですが、今年読んで面白かった本を紹介します。

絵本 『michi』 junaida。 絵の詩的な美しさ・・・。何度でも見たい。



児童書 『野生のロボット』ピーター・ブラウン。
スター・ウォーズみたいに、人間味あふれるロボットが愛らしい。続編の邦訳が待たれます。



本格的・和風・SF・ファンタジー(←なんのこっちゃ)。『火狩りの王』。山田章博さんの挿絵もみどころ。四巻の発売が待たれます。



シリーズ全部が楽しすぎてハマった、女王陛下の少年スパイ・アレックスシリーズ。ジュニア版007。秘密道具と個性的な悪役。荒木飛呂彦さんの挿絵もみどころ。個人的には第二作目の『ポイントブランク』(雪山の金持ち学校へ潜入)と、第五作目の『イーグルストライク』(アムステルダムで自転車で逃げるシーンが面白い)がお気に入り。



2019年は素敵な作品に出会えてうれしかったです。
2020年も面白い作品に出会えますよう!

ギルガメシュ王さいごの旅

『ギルガメシュ王さいごの旅』 ルドミラ・ゼーマン文・絵 松野正子 訳 岩波書店



親友エンキドゥを死に奪われたギルガメシュ王は、死を滅ぼし、永遠の命の秘密を得ようと、長く苦しい旅にでる。はたしてその秘密を手にすることができるのか? 

ギルガメシュ王の物語三部作の完結編。
不死を求めて旅に出るギルガメシュ王。表紙は骸骨が累々と浮かぶ海で、小舟を漕ぐギルガメシュ王です。すさまじい・・・。

旅に出たギルガメシュ王は、旅先で子ライオンの命を助け、ともに旅をすることになります。太陽神の庭で、「不死の秘密を知る者の名はウトナピシュティム」と聞いたギルガメシュ王。王は砂漠を越え、ブドウつくりの女性・シドゥリの館で休ませてもらいます。シドゥりはウトナピシュティムは死の海を越えた島に住んでいると教えてくれます。

たくさんのオールを用意したが、最後の一本のオールまで波に奪われ、とうとうシャツを帆にして島にたどりついたギルガメシュ王。ギルガメシュ王と対面したウトナピシュティムは、「7日間の間目を覚まし、私が物語を読む間、眠らずにいられたのなら、不死の秘密を教えよう」と言います。ウトナピシュティムが語ったのは、ノアの箱舟のような物語。
そしてウトナピシュティムが語り終えてギルガメシュ王を見ると、王は眠っていました。

ウトナ先生の授業の口調が、眠気を誘ったのかな・・・?

結局不死の秘密を得ることはできなかった王ですが、(裏表紙になっている、王ががっくり膝を落としたポーズが笑える・・・)哀れに思ったウトナピシュティムが、若返りの海草の生えている場所を教えてくれます。
海草を手にいれ、都に戻る途中に立ち寄った島で眠るギルガメシュ王。しかしそこに蛇に化けたイシュタールが現れ、その海草を食べてしまいます。(←復讐が執拗・・・。)

目が覚め、海草がなくなったことを嘆き悲しむギルガメシュ王。そこに鳥になったエンキドゥが現れます。エンキドゥはギルガメシュ王を背中に乗せ、ウルクの美しい都を上空から王に見せます。そして「これはきみが築いた都だ。きみは人々の心に永遠に生き続けるだろう」と言うのでした。

人が不死や老化をまぬがれないことを、神話として語る第三巻です。海草を食べたイシュタールが、脱皮して若い蛇になっている絵が面白いです。最後のウルクの都の美しさは圧巻!

絵本を三部作で読みましたが、初めて知るギルガメシュ叙事詩は、とても面白かったです。この三部作は、風格のある絵、簡潔にまとめられている文章で、ギルガメシュ叙事詩の入門編として、とても優れた絵本だと思います。